平らかなる共病記_アラフォー満喫中

胸腺がんと向き合う30代後半の日々

【感想】批判覚悟で批判する『80歳の壁』①

ネットで検索したり、本屋で良い本ないかなと探したり…がんサバイバーになってからというもの、医療情報をあさりつつ、「これ本当かな?」「信じていいのかな」と厳しい目を向けるようになりました。

そのなかで、自分は37歳。両親も高齢になってきているということで、がん治療のことを調べながら両親向けの情報も探す機会が増えました。よく見かける専門家に精神科医和田秀樹さんがいます。色んなWEBメディアなどでも和田氏の記事が配信されていて、なるほど~と思うこともあれば、ホンマかよ?と疑問に思うこともあります。現役の医者だといいますが、この人の記事を信じて良いものか…と考えるに至りました。

(`·⊝·´)「ここはいっちょ著書でも読んでみますか」

ということで去年の年間ベストセラー1位となった「80歳の壁」を手に取りました。「〇〇の壁」というと、養老孟子さんの「バカの壁」をはじめとした「壁シリーズ」がありますが、それにあやかったのかな?というのが初見時の感想です。

読ませていただきました!去年一番売れた本ならば、素晴らしいことが書いてあるのかなと思ったのですが…

(ʘ言ʘ╬)「おいおい。なんでその結論になるねん」みたいなことが出てきます。

揚げ足取りに見えるかもしれませんが、なんちゅー考えもってる人なんだ、この人の言うことを「鵜呑みになんてできない」と思わせる内容だったので書いていきたいと思います。

 

一応、共感できるな~と思ったポイントをまず書きます。

P12 プロローグ【小見出し】老いを受け入れ、できることを大事にする

ここに書いてあることはその通りだと思いました。病気になった自分としては「老い」を「病」に置き換えれば…「病」を受け入れてできることを大事にするということになりますから。また、80歳以上の人を「幸齢者」と呼ぶとすることも、高齢者の方を元気づける表現でとてもいいと思います

 

が!読み進めていくと、おかしく感じるところが。

 

【第1章 医者・薬・病院の壁を超えていく 幸齢者になったら健康診断はしなくていい】

第1章の冒頭で和田氏が自分で書いています。「現代の医療について懐疑的な考えを持っている」と…。その理由は『医師たちの多くは数字は見るが、患者は診ていない』『その典型的な例が健康診断だ』というのです。

なぜ健康診断をやり玉にあげるのか?わからないので読み進めます。

日本人の平均寿命が50歳を超えたのは1947年。そのころの『男女の平均寿命の差』は3歳ほど。いまではそれが6歳に広がっている。と説明したうえで…
なぜ女性の平均寿命は延びたのに、男性の平均寿命は延びなかったのか…と疑問を呈しています。

Σ(゚ロ゚;)え?意味がわかりません。

和田氏は「80歳の壁」のプロローグで男性81.64歳。女性87.74歳と令和2年調べの平均寿命を書いています!どーみても1947年に平均寿命が50歳を超えたぐらいだったのが、約30年間で30歳ぐらい延びています。何をどう比較すれば「男性の平均寿命は延びなかった」となるのでしょうか?

おそらく和田氏が言いたいことは男性と女性との平均寿命の差がより開いたのはなぜか?だと思うのですが、それこそ性別による差など様々な要因があると素人の僕でも考えつくのですが和田氏は一味違います。

「健康診断信仰」が原因の1つだというのです。

定期の健康診断は多くの会社で実施されていて、ひと昔前までは健診を受ける割合は男性が圧倒的に多いという状況だった。だから、健診が長生きに寄与するなら男女の寿命は逆転してもよかったはずなのに、むしろ差が広がった。つまり健康診断は意味がない。

ヾ(◎o◎,,;)ノええぇぇぇぇぇぇ!?

僕自身「因果関係」や「相関関係」を示せるわけではありませんし、男女の健康診断実施件数の差を調べたわけではありません。しかし素直に考えれば、社会全体として健康診断を取り組んでいれば、健康への意識があがる。病気のリスクを早期に発見することができる。健康診断の意味がないという結論はおかしい。

平均寿命が延びたのは戦後すぐよりも栄養状態があがったこと、時代が進むにつれ生活水準もあがったこと、医療の提供レベルもあがったことが要因だ。とするならまだしも…それにしたって健康診断が平均寿命の延びに一定の役割を果たしているのは間違いないでしょう。

(◕‿‿◕)和田氏の言っていることは…わけがわからないよ。

 

文章を読み進めるとむしろコッチを言いたいがためにそういう考えに至ったのではないかと思います。

和田氏の主張では…
一般的に大学病院などの勤務医は検査の数字は見るが患者は診ていない。目の前の患者の体に起きている事実よりも定められた数字を重視している。そのような医師に診断・治療されることは不幸だ!
というのです。

中にはそういう医師がいるのかもしれませんが、「一般的に~」と書けば、まるで大多数がそうだとでも言いたげな書き方です。

そして続く文章では
数値を正常にするために薬を服用し、逆に体の調子を落とす人や、残っている能力を失ってしまう人、寿命を縮めてしまう人がいるのです。

これもまたそうで、言葉は悪いですが「ヤブ医者」も世の中にはいるでしょう。ですが、一般的かというと言いすぎでしょう。

この本を読んだ人はこう受け取ることでしょう。
「自分を今診てくれている医師は検査結果ばかり見て薬を売りつけようとしているのだ」と…そして、診察に行ってもまともに医師の進める治療方法を行わない。


次の小見出しにはもっと恐ろしいことが書いてあります。
【医療に頼るなかれ。医師には「健康」という視点がない】

あんた精神科医なんでしょ。医者なんでしょ。どの口が言うとんねん。まさか自分だけは特別だ!などというのでしょうか?色々書いてありますが、和田氏自信が言葉にしているこれにつきるでしょう。「医師の話をうのみにしない」

そうです。精神科医和田秀樹医師の話をうのみにしない、ということが「80歳の壁」を読むときに大前提として持つべき心構えなのです。

 

 

一章なかばでこれなので、読んでいてかなりげんなりしました。後半には80歳の壁を超えるために実戦することみたいな内容なのですが、冒頭での主張を見ているとどこまでその通りなのと思ったり、わざわざ言われんでもと思ったり…政治的な主張が入ってきたり…これは~~~個人的には良書の類ではない。

今回はこんなところで。まだまだ????と思うところがあったので忘れないうちに書いておきます。

しかし、これが年間ベストセラーか…しかも去年の1位ということで、いま本屋に行くともれなく目立つところに山積みになっているかもしれず、また売れるというループ。みごとな高齢者商売といったところでしょうか。